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クロス屋の本分


菅野です。


 今年は記録的な暖冬ではないでしょうか。震災などもあり、日本海側は太平洋側よりは降っているのではないかと思われますが、少しでも被災された方が安心できる日々が続いていて暮れればなと思う次第です。一方、山間部や沿岸、特に稲作や養殖業の方々にとっては、通例の積雪が望ましいところでもあり、除雪を生業とされてる方々にとっては、切実な問題かと思います。いかんせん自然のなせる技。我々人間がいかにせんとも、気候までは変えられません。どうか少しでも普通の生活が続きますように、願うばかりです。


 さて。


 私職人畑で25年以上生活してきております。なんとかかんとかです。東日本大震災などもあり、ライフプランとは到底かけ離れた生活も余儀なくされましたが、今なんとか生活させて頂いております。私が、ずぶの素人からこの世界に入ったきっかけとなった会社は、内装仕上げ、タイル、左官、コーキング、建材販売と、多種に渡り営業していた会社で内装の仕事を学びました。バブル期もとうに終わり、消費税も5%だったかな、になり、勤めながらも年々暇になっていったような時期ではありましたが、社員旅行があったりと、まだその当時は「会社」というものに所属した肌感覚で仕事を学んでいました。その間わずか6年半でしたが、その間に、クロスや各種床施工、建具はやっておりませんでしたが、せっかちな師匠と、ムッツリスケベなゆったりした師匠の2人の手のもとで、あれやこれや覚えさせて頂きました。




人口数万人の小さな町でしたが、今思えば、よくも年間切れずに現場に出させてもらってたなと思うばかりです。とはいえ、僕が6年目あたりの頃は、1ヶ月暇なことも珍しくないくらい田舎の状勢は厳しいものでした。そんな頃に独立したわけですから、家族の顔が青ざめたのも仕方がないことだったでしょう。そんな会社とは今も仲良くやりとりはさせてもらっていて、なんて言ったらいいか微妙ですが、我ながら綺麗な辞め方をしたな、とは自負しています。笑


前置きが長くなりましたが、あの頃40代だった師匠達も60代半ばになり、あの頃20代だった当の僕も、まもなく50代になろうとしています。時が経つのは早いものです。あの頃おじさんに見えていた師匠達より僕の方が年上だなんて。。。笑 職人さん方なら、その感覚は大いにあることでしょう。


そう、僕らはとっくに若くないんです。笑


そりゃあ業界全体で見たらまだまだ僕の世代は若いんです。そりゃそうです。みんな歳とってるわけですから。逆ピラミッドよろしく、下支えが薄いまま、昭和から平成を作業車で駆け抜けてきた我々中高年職人世代は、均等に歳を取っているわけなんであります。


めでたくヘルニアという称号もいただきました。


それでも若い職人さんには、まだ負ける気はしないのでありますが。笑


歳を取ったという話をしたいわけではないのです。本題に入りたいと思います。




僕は全国の職人事情を把握しているわけではありませんが、職人不足と謳われている昨今、おおよその肌感覚は合っているだろうという定でお話しします。

僕ら40代を10と例えると、おそらく50代は12か13くらいの比率で職人がいるかと思います。60代も後半になり辞めてしまった方もいるとは思いますが、比率としては50代と変わらないかと思います。で、30代は、おそらく6くらい。20代は4くらいかなと。外れていたらごめんなさい。でも僕の周りを知る限り、おそらくこんな感じです。もちろん業種によって差はあると思います。電気屋さんや設備屋さん、足場屋さんや鳶の皆さんには若い人が多いのかなという実感もある一方、タイル佐官系はかなり貴重な人材となり、そこに次ぐのは大工さんではないでしょうか。先ほど出した比率の対象は、内装、特に仕上げの皆さんが対象だと思って頂いて構いません。そして内装の中でも、床の職人さんは最早貴重な存在になりつつあります。床専門の皆さんですね。僕も床の仕上げ工事はできますが、僕みたいなのはマルチな分野ですので、床屋さんと同じにしては申し訳ないので分けさせていただきます。

一方で70代の職人さんは結構現役です。大工さんなどは特にそうかと思います。

よくいえば、健康でさえいれば、長らく続けられる仕事、と位置付けることはできるかもしれません。



あと何年かしたとき、クロス屋は必要とされなくなる業種とも言われています。おそらく建物の壁がパッケージ化され、パネルという表現で完成させることを意味しているのだと思います。その昔、コンビニの内装もラインを入れるところまでクロス仕上げで仕上げていました。今は全てパネルで仕上がり、コンビニ建設でクロス工事はおそらく無くなったのではないかと思います。床もセラミックタイルで統一され、当時のコンビニの仕上がりとはだいぶ早いタイミングで変貌を遂げました。それを思えば住宅なども刻一刻と変わっていくことは、遠い未来でもないのかもしれませんね。時代の流れまで職人が捻じ曲げる力は無いとは思います。とはいえ、ゼロになることはないと思うので、それ相応の需要というものはあるでしょう。でも僕は遥か昔から漠然と思ってました。


なんでクロス工事ってこんなに安いんだろうって。笑


すみません。個人的な主観です。


あまり意識されてないところなのかもしれませんが、クロス屋さんという生き物も、壁紙という「商品」を販売しています。それは、塗装屋さんもタイル屋さんも然りです。そのほかも。今日はクロス屋さんとして書かせてもらいます。

いつの日からかは存じませんが、クロス工事というものは、「材工」という商品も工事手間も一括りになった計算で見積もりと請求をしています。この在工というものが今、物価高と共に暗雲が立ち込めているわけです。モックモクです。

一方で、人件費というものももちろん存在しています。1人の職人が一日稼働することで発生する人件費です。これは、年を追うごとに上がっているわけです。アルバイトの時給が上がるのともちろん一緒です。これも今の職人業界において大きな課題になっていくものです。もちろん物価の高騰と共に在工の価格も上がってはいるのですが、それはほぼ、仕入れ値の高騰と価格差が比例している程度のものです。恐ろしい現実です。仕入れの値上がりと注文される金額の値上がりが必ずしも比例するとは限りません。むしろ、このくらいの金額でできるんでしょ、本当は。くらいの感じが一般的です。ネットで価格を調べられる時代も、現場の職人達にはある意味大きな足枷となっているのも事実です。実際の現場は、


「そうではないのです。」


ネットには、ネットの世界があります。人の顔を見ないで成り立つ商売には、人の顔を見て成り立つ商売とは一線を画した世界があるのです。それは、建築資材も一緒です。まどろっこしいので書きますが、利益率数%で成り立つ商売と、成り立たない商売の二つがあるのです。そこだけは、消費者の皆様には少しでも理解していただきたいところであります。ただ、悲しいかな今の「時代」とはそれが混在した世界であることは揺るぎないし、そこも踏まえて続けていかなければいけないのが今の時代かとも思っています。


もちろんこの世には善も悪もあり、強気の方もいれば弱気の方もいる。職人の世界も然りです。でも一般的に「下請け」と呼ばれる世界を生業としている、僕らも含め業態は、今でも、結構泣かせれています。笑

笑って誤魔化していますが、事実です。でもやるんです。もちろん意味があってのことですが。総工費の消費税より安い仕事です。僕は昔からいつも思っていました。こんなに目立つ仕事なのに、なんで消費税より安いんだろうって。笑

クロス工事の世界はとてもシビアな目線で見られる世界です。1ミリにも満たない隙間でも指摘される。下地が悪くてもクロス屋さんがなんとかしなくてはならないことも多々。クロス屋さんがなんとかしてくれる。このくらいならなんとかなるでしょ。そんな申し送りの後に1ミリにも満たないところで指摘を受ける世界です。クロスというものは、貼った日が一番良い状態の商品です。時が経ち、味が出てくるものではありません。素材はビニールで熱や温度変化、湿気にも反応し、いついかなる環境にも敏感に反応してしてしまう商品です。合わせて下地にも寿命があり、何度も張り替えをしていると下地そのものが年をとっているため、何日かして変化することも多々あります。それでも無償で修繕に行くのがクロス屋さんです。それでも総工費の消費税よりも場合によっては安い世界で、一件でも多く現場をこなさなければと日々奮闘している生き物なのです。


愚痴っぽくなりましたが、ちょっと理解していただきたく、非難も承知で書かせていただきました。



これから10年後。渡辺美里みたいなくだりですが。これから10年後、それから20年後、僕の出した比率が正しければ、最も働ける年齢の職人さん達は少なくなり、我々のような理屈先行型の職人(笑)は60歳、70歳となった時、建設業界はどうなっているのかはわかりません。ポイポイカプセルのような住宅が主流になっているのならキッパリ諦めもつくでしょう。笑


新築が建たないと言われている一方、アパートなどは増え、住宅はコストを抑え、中古や賃貸が主流の時代が来るかもしれません。車もシェアする時代です。今から数十年前、そんなことが予想できたでしょうか。


車が空を飛び、ポイポイカプセルが住宅の基本になり、買い物は基本ネット。出会いも別れもAIが全て決めるような、そんな時代がもし来るなら、それはそれで楽しみではありますが、それまでに一呼吸おけるほどの生活を送っていたいものです。


とどのつまり、そんなに危惧するなら辞めたらいいじゃん!と言いたい人もいるかもしれません。が、ごめんなさい。この世界の本質に惚れた人間であり、関わる人が好きだから、他の仕事を考えられないだけなんです。でもごめんね。書きたいこともあるから今日は書かせて頂きました。どんな時代になろうとも、お客様が喜びを感じ、携わった職人達が満足できる世界が続きますようにと願うと共に、いつまでも少しでもそんな仕事ができたら良いなと思う次第です。


流行り病が続いています。

くれぐれも皆様、お身体にはご自愛ください。


かくゆう僕も、比較的休むような生活を、少しずつ獲得できておりますことをご報告いたします。


関わってくれている皆様に、感謝。


菅野でした。


うす!


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